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校庭に植えられた欅が、輪郭のはっきりとした濃い影を、アスファルトに作り出している。
「まだまだ、影が、はっきりしているなあ」
浮羽は、携帯電話を取り出してみた。発信履歴を表示させて、ワカちゃんの電話番号を選択する。小さな顔を傾けて、耳元にあてた。
呼び出し音が、定期的に聞こえる。そのリズムが、相手との距離に変化がない証のようだ。
一向に、電話に出る様子はなかった。諦めて、電話を切る。
「図書館なのかな」浮羽は、唇を尖らせた。
校門を通り抜ける。同時に、車道を走り抜けていく車の騒音が大きくなり、散漫になった。
その車道を挟んで、交差点を渡った所にあるバス停に向かう。
一度立ち止まり、そっと振り返ってみた。
視線の主は、やはり、見当たらなかった。
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