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二人の歩みは遅く、すぐに追いつくことができた。三十メートルほど距離を保って、じっくりと観察する。
別府駅の方に向かっているようだった。御影石の地面に、二つの影が仲良く並んでいる。高くなった太陽が、影を短くしていた。
「あの女、知り合いなのか?」
記憶を探ってみる。だが、『サキちゃん』には、全く覚えがなかった。
信号が赤に変わり、信号待ちになる。二人との、距離が縮んだ。
「なんだか、面白い気持ち……。ワクワクする」と、『サキちゃん』は、その背後まで近づいてみる。一歩、一歩。さらに、一歩。
その時だ。隠し持っているハサミが、ドクン、と鼓動したように感じた。
「そんなに……」と、興奮のあまり、続きを声に出しそうになった。
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