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白いニットのワンピース。胸の膨らみまで伸びている髪は黒く、その艶が太陽の光を浴びて、天使の輪ができている。
「やれやれ」と、まるでお爺さんのように、僕は浮羽の問い掛けに呆れてしまった。これまで何度、同じ質問をされ、同じように回答してきただろうか。
その回数を、頭の中で数えてみる。……ああ、ちょうど十回目、いや、もう十回目だ。生まれた感情に蓋をするように、僕は目を細めた。
「何度も言ったと思うんだけれど……」冷静を装って、僕はこたえる。「話してみたいんだ、『サキちゃん』と。もし、警察に捕まってしまったら、『サキちゃん』は真実なんて話さないよ」
浮羽が、「私は『サキちゃん』じゃないから、わからないけれどさ。でも……」と、興味なさげに唇をつきだしている。
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