六人目(1)

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 アパートへの近道を選んだ。別府駅前通りから、ホットストリートやよいを進んでいく。  人通りが、更に減る。その所為か、ホットストリートやよいでは、気温までも下がってしまった気がした。 「この辺りも、すっかり寂れたな」  ヒールが奏でる定期的な音以外、聞こえないほど静かだ。通り沿いにある店のシャッターが閉まっているのも、より冷やかに感じてしまう。 「不景気なのかねえ」と、感慨深くなっていた。「……いや、地方の都市だと、これが、普通なのかもしれないな」  そういえば、と凛は思い出してしまう。  今朝、今とは逆の方向にある会社に向かって、この通りを歩いていた時のことだ。  凛は、人の流れに乗って、道の脇を歩いていた。
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