六人目(1)

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 いつの間にか、「……大丈夫、……大丈夫」と、小さな声で呟き続けていた。  規則的な歩調で、兎に角、前に進む。黙々と、前方に意識を集中していた。  その所為だろう。……横道から静かに近づいてきた人物に、凛は、気づくことができなかった。  その距離が、数センチメートルずつ縮んでいく。それが積み重なり、やがて一歩分に。更に一歩分に。  影が重なるほどに、近くなっていた。重なった影が、闇でさえ吸い込む重力のように、濃い。  唐突に、凛に、衝撃が訪れる。 「いったぁ」  誰かに躰を押されたのだと思い、規則的だった脚が、止まった。 「もう、何なのよ、いったい!」と、凛は自分に起きている危険を、まるで理解できていなかった。
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