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探偵ごっこ(2)
紺色の馬乗袴から、細い足首が覗いていた。
桜井浮羽は、目を細めて、二十八メートル先にある直径三十六センチの的を静かに見つめる。背筋を真っ直ぐ伸ばして、鼻からゆっくり息を吸い込んだ。
弓道場の床は残暑を忘れさせてくれるほど冷たい。それが、心地が良かった。
髪は、ポニーテールにしている。浮羽の黒髪は、まさに毛並みの良い馬の、それの様だった。歩く度に、ゆらゆらと揺れるそれが、何かを誘惑している様にも見える。
弓道衣を着た浮羽は、射位に立った。射法八節に従った動作を始める。
足踏み。射位で、足をすっと踏み、開いた。
胴造り。腰を据えて、ひかがみを張る。丹田に息を下ろして、下半身をしっかりと安定させた。
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