265人が本棚に入れています
本棚に追加
校門に向かって、再び歩き始めた。校庭に植えられた欅が、アスファルトの地面に影を作りだしている。漏れてくる陽光が、風に揺れていた。
「……光が、綺麗」
同時に、浮羽の長い黒髪が揺れる。
浮羽は、双眸を陽光が掠める度に、目を細めたりはしなかった。大きく見開き、眉をあげる。
「もしかしたら、『サキちゃん』ではないかもしれない、って思っているの?」
少しの沈黙の後、『その可能性もあるよ』と、ワカちゃんの気落ちするような声が電話口から漏れた。『今回の犯人は、模倣犯かもね』
「そう落ち込まないで。まだ、答えは出ていないんだから」と、浮羽は、慰めるように言ってみる。
校庭を抜けた。その途端に、車の騒音が大きくなる。
最初のコメントを投稿しよう!