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校門の前には大きな通りがあった。車の往来が絶えない道だ。排気ガスの臭いが、浮羽の鼻腔を通り抜けて、すぐに不快な気持ちになる。
通りを挟んで向かい側には、大型の書店があった。浮羽は、その書店をじっと見つめて、「さては……」と、声にする。
すぐに、「やれやれ、まったく困った人だな」と、微笑んだ。
「いま、どこ?」と、あえて訊いてみる。
『いま? えっと、学校の前の本屋だけれど』
「ちょっと待っていて。すぐに、そっちに行くよ」
浮羽は、信号が変わるのを待って、交差点を渡った。並木道を選んで、日差しが当たらないように気をつける。真っ直ぐ、書店へと向かった。
書店の自動ドアを抜けると、涼しい空気が全身を包んでくれる。
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