万引きは葬る(1)

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 会計をする際や、品物を運搬する際に、どうしても隙ができてしまったのだ。  そして、苦肉の策として行ったのが、店内の張り紙だった。  習字紙に自筆で対処することにしたのは、「まあ、心が篭っている気がするな」という、単純な思いからだった。  機械で印刷するよりも、気持ちが乗り移ってくれるのではないか? そんな、ありきたりな、願掛けのようなものだ。  堂本は、正座して、筆を手に取っていた。墨汁をつけて、書道用紙の白と向かい合う。そこで、手が止まった。 「さて、何を書くべきか」  堂本は迷った挙句、【万引きは葬る!】と、一気に書いた。 「『葬る』という言葉が、多少、好戦的な気もするが……」  どうせするなら、後悔しないようにしよう、とそのままにしたのだ。
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