265人が本棚に入れています
本棚に追加
会計をする際や、品物を運搬する際に、どうしても隙ができてしまったのだ。
そして、苦肉の策として行ったのが、店内の張り紙だった。
習字紙に自筆で対処することにしたのは、「まあ、心が篭っている気がするな」という、単純な思いからだった。
機械で印刷するよりも、気持ちが乗り移ってくれるのではないか? そんな、ありきたりな、願掛けのようなものだ。
堂本は、正座して、筆を手に取っていた。墨汁をつけて、書道用紙の白と向かい合う。そこで、手が止まった。
「さて、何を書くべきか」
堂本は迷った挙句、【万引きは葬る!】と、一気に書いた。
「『葬る』という言葉が、多少、好戦的な気もするが……」
どうせするなら、後悔しないようにしよう、とそのままにしたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!