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秋が近づいてくることが嬉しいのか、こぼれんばかりの笑顔を振り撒いている。
「平和に見える町だね」
浮羽が、「それって、『サキちゃん』がいるから?」と、訊いてきた。
「この町の闇には、切り裂き魔『サキちゃん』が潜んでいる」
僕は双眸をとじて、『サキちゃん』に関する情報を頭のなかで整理した。
はじめて『サキちゃん』が現れたのは、ギラギラとした太陽が、夏の勢力拡大に加勢しはじめた頃だった。座っているだけでも頬を汗がつたう蒸し暑さのなかで、気温がさがり、すこし気分を安らげる時間帯。
八月七日、金曜日の夜のことだ。
「最初の被害者は、別府市内の高等学校に通う女子高生だったよね? 被害者が通っている学習塾をでたのが、午後九時過ぎ……」
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