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すれ違う際、撫で回された『べっちょん』が、ふらふらと歩く姿は、更に疲弊した様に見えた。
「すみません」
僕は、声を掛けて、頭を下げた。そんなことをしながら、目的とするホットストリートやよいの入り口に、近づいていく。
「うわ。結構、凄いことになっているね」浮羽が、全体を観察するように、背伸びをしている。
「テレビの影響力って、凄いんだな」
人だかりが、出来上がっていた。僕らは、その一番後ろに並んでみることにする。少し背伸びをすると、警察官の姿が視界に入った。仁王立ちで、野次馬の方に視線を向けている。石像のように、無表情だ。
「ほら、やっぱりね」僕は、目を細めて、浮羽を見つめる。「だから、嫌だったんだよ」
それでも諦めきれないのか、浮羽が、人ごみを離れていく。
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