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それは、横道からソルパセオ銀座に戻る、途中の出来事だった。
僕らは、一人の女性とすれ違った。
ノースリーブのシャツに、フレアスカート。一般的に、美人と呼ばれる部類の女性だ。横道の脇で、壁に寄りかかるようにして、立ち止まっていた。
じっと、僕らに視線を向けている。あまりにもその女性の視線が僕らから逸れなかった為、どこかで会ったことがあるのだろうか、と記憶を探りながら、取り敢えず一礼した。
「こんにちは」と、声も出してみる。
そのまま、足早に通り過ぎようとした。その時だった。
その女性が、小さな声で何かを言った。明らかに、それが僕らに向けた言葉だった。
……僕は、それを聞き取ることができなかった。
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