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太陽の光を浴びて、その怪しげな赤い光を周囲に撒き散らしていた。
「お前が……」と、『サキちゃん』は、声に出していた。「お前が、言わせたのか?」
一瞬、赤く光る刃が蠢いているように見えた。刃の表面を、小さな虫が這っている。深紅に染まる、ウジ虫だ。それらが血を求めて、匂いの方に進み続ける。
目を擦り、瞬きをした。
ウジ虫は、まるで初めから居なかったかのように、消えてしまっていた。これまでと変わらない赤い刃が、鈍く輝いている。そのまま、暫く見つめる。
「気のせいか?」と、落ち着きを取りもどした。
『サキちゃん』は、口を開いていた。「……すぐに、会いに行くからね」
足早に、歩き出す。
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