探偵の助手(1)

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 ジーンズのポケットに、手を入れる。携帯電話を取り出そうとした。 『サキちゃん』の犯行現場で、見落としたことがないか、桜井浮羽を誘って、行ってみようかと考えたからだ。  けれど、躊躇していた。「気分転換に、部活に行く」と、浮羽が言っていたことを思い出したからだった。  今頃、学校の弓道場で、汗を流しているに違いない。 「……弓道って、汗をかくのかな」  僕は、席を立った。そのまま、図書館の出口に向かっていく。  日差しが強く、自然と目を細めてしまった。残暑が、とても厳しかった。少し歩くだけで、汗が米神を伝う。 「早く、秋らしくなってくれれば良いのに」  そこで、足を止めた。「そういえば」と、重要な事を思い出したからだ。 「麓病院って、別府駅の二駅先にある、亀川(かめがわ)駅から歩いていけたよな」  ……そこには、先日、『サキちゃん』に襲われた女性が入院している。
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