7章 6月-体育祭

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玉入れは、予想に反してとても手に汗握る競技でした。 まず地面に落ちている玉をももさんが拾おうとしては他の方に先に取られ、ようやく拾った玉はカゴの遥か下をふらふらと彷徨うのです。 しかしももさんの真剣すぎる顔の効果か、最初は半笑いで見ていた香奈さんも次第に前のめりになり、私と一緒に固唾を飲んでももさんの頑張りを応援します。 「いけっ!もも、そこよそこ!……ああ~!」 「ももさん!もっと高く!あっ、今のいい感じでしたよ!」 私達の夢中の応援の甲斐あってかももさんはなんと、玉をひとつカゴに入れる事が出来たのです!すごい! 私と香奈さんは夢中で手を取り合って喜んでいたので、真後ろまで接近してきた気配に気付けませんでした。 「随分熱心に応援してるね?」 「わぁ!?」 「ひぅっ」 私達は揃って悲鳴を上げ、バッと振り返りました。 「はは、そんなに驚くと思ってなかったよ。ごめんね」 悪びれずにそんな事を言うのは二ツ屋先輩でした。 偶然でしょうが、パネルの影にいて下さるお陰で、チカチカと眩しいプラチナブロンドに目をやられずに済みました。 「ええと、何のご用ですか?」 正直私はこの人には苦手意識を持っています。……少しだけですよ? ペンキを運んでいた時の恐怖体験がまざまざと思い返されて、立っていたら足が勝手に後ずさっていた事でしょう。 「いや、そんなに警戒しなくったって取って食いやしないよ。単に気になったんだ。玉入れのどの辺りにそんなに熱中する部分があったのかなって」 ……何ですか?何でこんなに愛想が良いんでしょう?何を企んでいるのでしょうか……。 「友達が一生懸命やってればそれが何であれ応援するでしょう?」 香奈さんの当たり前の事を言わせるなと言わんばかりの返答に、二ツ屋先輩はきょとんとします。 「そうかな?僕の友達はあまり何かを必死でこなさないからよく分からないな」 「それは勿体ない生き方をされているんですね、そのご友人も副会長様も」 か、香奈さんってズバズバモノを言うのですね。 二ツ屋先輩は攻撃的にも思える香奈さんの言葉を笑顔で聞き流しているので、私は何だかこの冷え切った空間にいたくないなあ、なんて……。
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