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ノゾムくんは困ったように笑った。
「どこかおかしいのか、もうすぐ死ぬのかって思ってたんだよ。ここんとこ、その夢があまりにもリアルすぎて……でも、今朝はなんとなく夢だって傍観してる自分がいてさ」
私は頷いた。
「私も、同じ。どういうきっかけで追加されるのかわからないけど、ぼんやりとしてた物をしっかりと思い出したり……どんどん鮮明になって、私も、もうすぐ死んじゃうのかなぁって思ったことあった」
呑気に木の実を食べる熊は可愛らしくて見ていると思わず顔が緩む。
「実はさ めちゃくちゃお酒弱くて、恥ずかしいけどさ。つい最近、急アルで死に掛けたんだよ」
「えええ」
ノゾムくんはえへへと笑うと、恥ずかしそうに俯いた。
「その時に見た夢が、なんか果物をさ、食ってる夢で」
「果物?」
「うん。木の枝のうえで、女の子といい香りの果物を食ってるの。それを漢服っていうヤツを着てる女の人が笑ってオレたちを見てるんだ。
で、オレの名前を呼んで怒ってるんだよね、でもすげー笑って言うんだ。
『そんなところで食べて。まるでクマみたいよ』って」
「……」
「オレの隣に座ってる女の子が、下を向いて言うんだ『確かにクマに似てるけど、言いすぎです』って。
『しょうがないじゃない、クマにしか見えないわ』って言い返して呆れたようにその漢服の女の人は建物の中に入っていくんだけど、オレの横の女の子は笑いながら言ったんだ」
「……私は、クマさん。好きですよ。大きくてかわいいし、強いですから。それに私の隣のクマさんは優しいクマさんですし」
ノゾムくんはハッとして顔を上げると私を見た。
「! なんで……知ってるの」
「……私が言いました。信じてもらえないかもしれないんですけど。私が言ったんです」
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