一途な恋

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「いた」 私は、息を切らしながら、必死で走りました。彼女の居場所は判っていました。 彼女に関わる二つの事故が起きた場所。 そして、今まさに三つめの悲劇が起きようとしている場所です。 黒い喪服を来た彼女の周りには、澱んだ闇が渦巻いていました。 彼女に取り憑いている悪霊は、一つや二つではありませんでした。 男の彼女への妄執が集めた悪霊に加えて、彼女の婚約者への妄執が集めた悪霊たちが加わっているのです。 「あれは、もう…」 私は、一瞬躊躇いました。 あまりにも濃い闇に私も飲まれてしまいそう。しかし、背後にいる男の霊が、私の背を必死に押します。 「どうか、どうか、彼女を!彼女を助けてください!」 私は霊に押され、半ば仕方なく近づいて行きました。魔除けで身に付けている翡翠のペンダントや紫水晶のイヤリング、ラピスラズリの指輪などが、一斉にキリキリと悲鳴をあげました。 やはり無理だ。 そう思った瞬間、不思議な暖かさが私を包みました。 「これは…!?」 私は自分の中に溢れるばかりの力が満ちていくのを感じました。 これなら、あの悪霊たちを祓うことができる。私は急いで彼女を囲うように玉石を配置して結界を張り、祝詞を唱えながら、塩と水とで場を浄めました。憑いていた悪霊たちは呆気なくすべて祓われました。それを見て男の霊も、迷いが消えたように消えて行きました。 彼女は、なぜ自分がこの場所にいるのかさえ判っていませんでした。 ともあれ、それで全てが終わりました。 ただ、一つ。 突然、私の中に宿った不思議な力の正体を除いて。 真相はわかりません。 でも、私には答えが判る気がしています。 あの暖かい力の正体。それは、愛する人を残して逝ってしまった婚約者が残した彼女を守りたいという強い想いだったのではないかと、そう思うのです。
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