不親切な親切

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 幸い、美容院へはここへ引っ越してきてから何軒か行っていた。そこそこ良くてここから最も近い美容院の場所を教えた。 「ありがとうございました。では行ってみます」  おばあさんは満足げに歩いていった。今から直で行くのだろうか。予約制の店だった気がするんだけど大丈夫かな。  親友が言った。 「ねえ、さっき言ってなかった? ここからは遠いけど交通費が気にならないくらい腕も対応もいい美容師のいる店見つけたって」  ああ。たしかにさっきそんな話を彼女としていた。それは本当だ。  美容院というのは歯科医院やコンビニ以上に多いらしい。だからってわけではないだろうけど、その分当たり外れがある。一番最悪だと思ったのは、引っ越し後初めて行った店の美容師が初対面からなぜか不機嫌で、痛いくらい乱暴に髪を扱われたこと。  あれはさすがに不愉快で、この人色々やばくない? 社会人としてどうなの? と、こちらが妙に冷静になり観察してしまったほど。不機嫌が高じて変な髪型にされそうで嫌だったので気を遣って髪質の相談をしてみたらコロッと機嫌が直り乱暴な手つきもなくなった。数日後その美容師は店を辞めたと、店からハガキが来た。  割引券付きだったけど即ゴミ箱に捨てた。あの美容師がいてもいなくても二度と行きたくなかった。  そこまでひどいのはそこが最初で最期だったけど、通いたいと思える店を見つけるまでに時間がかかった。  腕が良くてもやたら店のシャンプーを勧めてきたり、対応が良くても腕が微妙で提示した写真とはかけ離れたイメージの髪型にされたり。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!