「またね」

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 段々と家の外に出ることが怖くなり、大学の授業にも出ずにアパートに引き籠るようになった。  それでも届けられる赤い封筒。  毎日毎日、誰かの足音が部屋に近付き、そして郵便受けに投函される。  その度にビクリと肩を震わせる日々。  数日に一回、コンビニやスーパーに必要最低限の生活用品と食品を買いに行くだけでも盗撮される。  正直、いつも誰かに監視されているというストレスと、顔すら見せることのないストーカーへの恐怖で頭が狂いそうになっていた。  そんな時、スマホが突然鳴り出した。  相手は母親から。  両親にはストーカーのことは話していない。  もし、ストーカーにあっていることを知られたら、すぐにでも一人暮らしを止めて帰ってこいと言うに決まっているからだ。  このタイミングで電話をかけてくるということは、まさか、どこからかバレたのかと思い、電話に出るのを躊躇したものの、出ない訳にもいかず、覚悟を決めて電話にでた。 「もしもし」 「あぁ、アカリ? 今大丈夫?」 「うん」  いつもはおっとりしている母の、少し硬い口調に緊張が走る。 「実はね……遠山さんご夫妻が亡くなったのよ」 「えぇっ?」  母の言葉に私は今現在の自分の状況を忘れ、驚きの声を上げた。  遠山夫妻というのは、私の父親の親友と、その奥さん。  以前は隣近所に住んでいて、家族ぐるみで仲が良かったのだが――  ある日を境に彼らは私達の知らない場所へと引っ越しした。  その原因は……彼らの息子にあった。  
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