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「おい、大丈夫か?」
「真斗君……」
真斗君も息を切らせながら駆け寄ってくれて、怪我がないのを確認して先輩を睨みつける。
「コイツに、何しようとしたんですか?」
真斗君の質問に先輩は、息を吐いて私を見下して嘲笑ってくる。
「別に? ただ見学に勧誘しただけ、そしたら一人で怖がちゃってさー、ほら、冬馬さん来ただろ? 俺は嘘なんてついてないよ。ね、百合ちゃん」
また名前を呼ばれてゾッとする。
もうなんでもいい、ここから早く離れたい。この人にこれ以上そんな呼び方されたくない。
「さ、冬馬さん早く活動しましょうよ、 きっと楽しんでもらえると思いますよ」
先輩の汚い手が冬馬さんの肩にのせると、彼は虫でも止まったかのように払いのけてしまう。
「申し訳ないけど、今日僕がここに来たのは、学校長に仕事を頼まれたから。この下品なサークルに行く理由はないよ」
冷たくあしらうと先輩は舌打ちをしてお高く止まりやがってと苦言を漏らす。
「実は、今から学校長の元へ行く予定でね。このこと話しておこうか? 実はこのサークルのことは昔からどんな活動をしているのかは知っているんだよ? そしたら君達は、下手したら退学じゃないかな?」
先輩は先程まで見せていた余裕をなくしてしまう。
「……脅す気ですか?」
「別に、君達の大学生活をどうこう言うつもりなんてないよ。けど、彼女や真斗君を巻き込むのは今後一切許さないからね」
冬馬さんの顔が怖かったのか、頷くことも出来ない彼の表情は青ざめる。
彼はそんな彼をクスリと笑ってそれ以上は何も言わず、私を立ち上がらせようと手を差し伸べてくれたので、それに掴まってヨロヨロと立ち上がり、二人に支えられながら空き教室に連れてきてもらえた。
ようやく震える体を止めることが出来て、落ち着きを取り戻した私の開口一番は……
「ごめんなさい……」
二人に迷惑をかけてごめんなさい。お仕事の邪魔をしてごめんなさい。浅はかな私でごめんなさい。
涙をポロポロ流しながらひたすら謝り続けてしまった__
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