幻影

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   冬馬さんはこんなにも人を魅了してしまう凄い人なんだと改めて思った。  きっとここにいる子達は少しでも彼に近づけるように、彼のようになれるように腕を自分を磨いている。  それに比べて私は親戚という立場を使って、何もしないでのうのうと彼と一年に一回言葉を交わして……  恥ずかしい、そして悔しい 「けど、冬馬先生のファンには残念な話なんだけど、実は冬馬先生は部員じゃなかったの」 「え?」 「ほら、高校卒業すると18歳でしょ? たしか冬馬先生の流派って18歳になると結婚してすぐに家元になるのがしきたりだから、それどころじゃなかったみたい。だからここに来ても彼がいた証拠とかはどこにもありません!」  そうだよね、ちょっと冷静に考えれば分かっていたことだ。  冬馬さんが私と同じような学校生活を送れるはずもない。しかも、結局結婚はしなかったんだから、それどこらじゃないのなんて当たり前だ。誰かと一緒に切磋琢磨する冬馬さんは私の幻想にすぎないんだ。 「残念?」 「あ、いえ……」 「嘘、残念って顔してる」  残念、部長さんの思っている残念と私の思っている残念は違う。  結局、同じ学校に通って彼の幻影を探してもやっぱりそれは幻で意味がなかったんだ。  きっと誰もいなかったら泣いてしまっている。 「あ、萩原君の作品が出来たみたいよ」  部長さんは私の腕を掴み彼のところへ連れてってくれる。  萩原君の作品は冬馬さんと違ってダイナミックでギラギラとしていて彼らしい作品、周りの生徒部長さんは意見を言い合っている。 「日下部さんはどう思う?」  気を利かせて私に話しかけてくれる萩原君  凄いね、綺麗、カッコいい  褒める言葉はたくさんあるはずなのに、言葉にすることができなくて彼と冬馬さんが重なってしまう。 「……ごめん、私にはよく分からない」  せっかく大好きな人がいる世界なのにこれっぽっちも理解できない。やっぱり貴方と私じゃ世界が違いすぎるよ__  
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