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すっかり外は真っ暗で、気温もぐっと下がってしまった。
そういえば学校に行く前に見たニュースで夜になるとさらに冷えるとか言っていたっけ?
空っぽになった私は、オリオン座が輝く夜空を見上げる。
「日下部さん!」
校門を出ようとしたら後ろから萩原君が声をかけてきた。
部活が終わって後片付けがあるからと見学者の私は先に帰されて彼は残ったはずなのに
「萩原君、どうしたの?」
「部長が暗いから送っていけって、一緒に帰ろ?」
「ありがとう、けど大丈夫だよ」
「そう言わずにさ、一人で帰ったなんてバレたら俺殺されるよ」
「大袈裟だよ」
何度も拒む態度をしても萩原君は私の背中を押して歩かせてくる。
ここまで来たら諦める他なくて、大人しく歩くようになると萩原君は押すのをやめて隣に並んで一緒に歩いてくれる。しかもきちんと車道側を歩いてくれるところに関心してしまう。
「日下部さんの家って近いの?」
「電車で二駅だよ。だから駅までで大丈夫だから」
「俺も電車だから気にしなくて良いよ、そういえば冬馬先生の家はこの辺りなんだよね」
「そう、なんだ……」
きっと冬馬さんは家から近いのと、ある程度名のある学校でこの高校を選んだ、もしかしたら選ばざる得なかったのかもしれない。あの人の生活は全て華道が中心だったから
行こうと思えば行ける冬馬さんの元に……
けど、そんな勇気は持ち合わせていないから偶然がいつか起きないかと通学している。
「……見学の前に言ってた聞きたいことなんだけど」
萩原君は私の行く手を阻むように立ち止まりまた見下ろしてくる。
「萩原君?」
「やっぱり、日下部さんって冬馬先生と関係あるんでしょ?」
あぁ。これはもう逃げられない。
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