社会人として

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 社会人として__  成人式の時に中学校の時の教師がそんなことを言っていた。当時は、そうだなっとその言葉に納得したりしていたけど実際社会人になって、当時の自分に分かったようなフリをするなと言いたい。  社会人として、社会人だからって何ができるというんだ__ 「後藤君、後この仕事お願いしても良いかな?」  向かい側のデスクに座っている先輩からファイルを渡される。  12月29日クリスマスも終わって街はお正月に向けて準備が進められていた。  今日は仕事納め、今日が終われば6日間ほどのお正月休み。  どうしても浮足気味になってしまう、けど年の瀬だからこそ急な仕事が増えるわけでちらりと時計に目をやると定時まで後15分  最後の最後に残業か……  何も言わずに先輩からソレを受け取った。  定時のチャイムが鳴るが誰も帰ろうとせず、黙々と目の前の仕事を終わらせている。  俺も皆もお疲れさんさん。  少し頭がおかしくなってへっと笑ってしまった。  よし、これで終わりだ  最後のエンターを勢いよくパチンと押して仕事を終えた満足感に浸る。 「おい、どうだ帰りに一杯」 「いいぜ、今日のビールは旨そうだ」 「そうだな」  同期の吉田が声をかけてくる。  向かいのデスクを見るとあのファイルを渡してきた先輩は既にいなくなっていた。  クソ、先に帰るぐらいなら仕事押し付けてくるなよ。 「どうした?」  苦笑している俺に声をかけてくる 「いや、定時15分前に仕事押し付けてきた先輩が先に帰ってるからさ」 「はは、やられたな。先輩って確か家庭持ちだろ? 早く帰りたかったんだよ」 「はいはい、独り身はだまーって仕事してやりますよ」 「そう拗ねるなよ、お前だって近いうち結婚して家庭を持ったら分かる気持ちだよ」 「おーおー、彼女持ちは言うこと違うなー」 「茶化すなよ」  鞄でケツを叩かれてしまった。  結婚ね、気づいたら26歳独身、彼女なし。そんな人間が結婚とか夢のまた夢だろ  心の中で毒吐きながら吉田に仕返しで同じことをしてやった__
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