2章 バージンロード

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2章 バージンロード

早朝、住宅街の公園。 周囲の気配に注意しながら、片隅にあるトイレに滑り込む。 人通りはほとんどないとはいえ、犬の散歩をしている老人やジョギングをしている主婦などもいるため、油断はできない。 別に私が用を足したい訳ではない。れっきとした調査だ。 男性用と女性用が分かれておらず、男性用の小便器と男女兼用の大便器個室が向かい合うようにして並んでいる。 3つあるそれぞれの個室のドアノブに、直径30センチほどの半球状の機械をかぶせて10秒。 「組織」から「どんな形状のものからも指紋を検出できる」という、この機械が送られてきたときは使い道など無いだろうと思ったが、意外と役に立つかもしれない。 トイレから出ると、機械の検出器の方を持ってきたカバンにしまい、伸びているコードをタブレットに接続。 アプリを立ち上げ、指紋のデータベースにアクセスして照合。 access・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ok 30秒ほどで照合が終わった。 タブレットに結果が表示されていく。 照合結果 検出された指紋  10個 ターゲット・篠原長治郎との照合結果・・・一致アリ 指紋の付着時期・・・12時間±6時間 見つけた。 今や町中にある監視カメラの解析結果から、この辺りに潜伏していることはわかっていたが、これで大分絞られてきた。 ベンチに座り、タブレットで町内の地図を確認する。 依頼人がいるのは町外れの山の中腹にある教会。 明日の朝、ターゲットが教会にたどり着いてしまったらゲームオーバー。 残り20時間ほどか、少し急がなければ。
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