侵食

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遠くで無機質な音が鳴り響いている。 多分、リビングに置き忘れた携帯電話だ。 部屋の中はもう、真っ暗になっている。 疲れていたのか、ほっとしたせいか、昼寝にしては随分と寝てしまったようだ。 相変わらず、携帯電話は鳴り続いている。 誰からの電話か、分かっている。 話す内容も分かりきっているからこそ、出る気にならない。 次第にその音に不快さを感じるようになって、自分の部屋からリビングへ出た途端、電話は切れた。 電話をかけなおすため、部屋の明かりをつけると、他人の家にいるような違和感が襲ってくる。 動けず、その場で立ち尽くした。 ここには、もう、私の居場所はない……。
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