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キッチンに戻ると、食事を作る気が失せた。 中途半端に残ったキャベツだけ全部切って、スープに入れて、さっさと食べてしまおう。 淡々とキャベツを刻む。 リズミカルな音だけが耳に入ってくる。何も考えなくて良かった。 「っ!」 左手の指に一瞬だけ痛みが走った。 慌ててカウンターに置いてあるテッシュを取って、人差し指に当てる。 指の隙間から見えたティシュは赤く染まっていた。 右手にさらに力を込めたが、ズキズキとした鈍い痛みが傷の深さを感じさせた。 情けなさと後悔が襲ってくる。 もう一枚テッシュを取り、指に巻きつけた。 落ち込んだ気分のまま、フラフラとリビングにある椅子に深く腰をかける。 左手を軽く上にし、祈るように指を押さえながら目をつぶる。 手を緩め傷口を見ると、再びじわりと血がにじんできたが、さきほどまでの勢いは消えていた。
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