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安堵の溜息をつき、立ち上がると、救急箱の中から絆創膏を取り出し、ぐっときつく巻きつける。
キッチンに目を向けたが、食事をする気さえ失せた。
さっきまで座っていた椅子にもう一度腰をかけ、テーブルを見た。
椅子もテーブルも色がくすみ、傷だらけだ。
思わず自分の掌を見る。シミが表れ、節くれだった手。
仰々しく手当された傷跡。
独身の頃はよく友人たちから羨ましがられた手も過去の栄光でしかない。
目の前の古くなった家具が自分と重なった。
これで何人目だろう……。
雅和のことをぼんやりと考える。
結婚してしばらくは見て見ぬふりをし、我慢を続けてきたが、五年ほどに前に、離婚を決意した。
しかし、これからは女性と関係を持たないと懇願され、しぶしぶ折れた。
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