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最近現れた女性の存在に気づいているのに、以前のように怒るエネルギーも離婚をしようとする前向きさもなくなっている。
年を取ったせいだろうか……。
結婚して十年以上経って、寝室も別になり、お互い仕事で忙しい。
離婚して新しい生活をはじめるよりも、今までの生活を続けていく方が楽だと思ってしまう。
変化することに疎くなってしまったのかもしれない。
そんなことを考えながら、その日は布団に入ったが、深く眠ることは出来なかった。
ガチャリという玄関を開けた音で目が覚めた。
部屋が明るい。
時計を見ると、七時すぎだった。
パジャマの上にカーディガンを羽織り、自分の寝室から出ると、雅和が帰ってきていた。
なにやら大きな紙袋を重たそうに抱えている。
暖房を入れ、ぼんやりした頭のまま、おかえり、と口にした。
「早かったわね」
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