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打ち掛けが背中から引っ張られて宙を舞った。帯に手が掛かる。
簡単にはほどけない帯がするりと解けた。
冷たく冴える眼差しで組敷いたわたしに優しさの欠片もない噛みつくようなキスをした。
お金で買われたわたしでもファーストキスくらい夢見てた。
ガリッ
応えようとしないわたしのくちびるにセンセは歯を立てた。
「!?……おまえ?」
泣かない。泣くもんか。
目が熱を持ってく。
震える指先でセンセを突き飛ばした。
花嫁衣装が花を手折られたように無惨に広がり、開いた胸元や裾に掛けていたその手が外れた。
お金で契約したのは事実。
それでも、わたしの精一杯でおじいちゃんの孫を幸せにしたかった。
笑わないと、
両親が死んでから寂しい思いをした人に、わたしだけはそばにいると思って欲しかった。
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