『若恋』恋物語

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泣くことは許されない。 わたしはお金で買われた花嫁だから。 泣き出しそうでドンと突き飛ばして、庭に降りるとその上に掛かる橋を縺れる足で渡った。 母屋と離れを繋ぐ橋の上で裾を踏んでそのまま池に落ちてく。 バシャッバシャッ 着物が重くて動けない、水を吸って更に重くなる。 もがけばもがくほど口に肺に水が流れ込んで息が苦しくなる。 ゴボッガボッ 息ができない――― ゆっくりと池の底に沈んでく。 ああ、わたし、死ぬんだ。 そうなると知ってたらセンセにもっと優しくしたのに。 ごめんなさい、センセ… そこで意識はふつりと途切れた―――
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