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まさか、娘に体を売れとか言うんじゃ。
青くなってると、サングラスを掛けたふたりの奥からわたしをじっと見ていた老人が杖をついて立ち上がりわたしの前に歩いてきた。
「お嬢ちゃんにはこの間大変世話になったのう。たかが鼻血を出したくらいで若い者が大袈裟に騒いで申し訳なかった」
鼻血?
よく見れば時々散歩で会うおじいちゃん。
いつだったか、鼻血を出してたっけ。
お父さんと友達だったんだ、このおじいちゃん。
「それでな。ハンカチの礼も兼ねて借金の肩代わりを申し出たんだが、ひとつ条件があってな」
「…条件?」
「うちの孫と結婚してくれるのならば、一億あげよう」
―――は?
「儂もそろそろ引退の時期だが、跡を継ぐ孫にはまだ嫁がおらん。それでは儂の世界では半人前と見られる。そこで」
おじいちゃんは言葉を切った。
「そこでじゃ、あんたを孫の嫁に迎えたい」
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