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「いえ、大丈夫です。それより門開けてください」
「ああ、そうだな。すまんすまん」
語り口も笑顔も爽やかで、短く整えられた黒髪も相まってザ・守衛☆みたいなお兄さんはテキパキと動き始める。
背筋が伸びているので守衛の制服がよく似合って身のこなしに無駄がなく美しい。
チンピラさんへのバイオレンスさえ無かったらパーフェクトである。
「ごめんな、名前の確認していいか?」
「ああはい、矢ヶ崎与一(ヤガサキヨイチ)です」
「んーと、矢ヶ崎くん、ね。はい大丈夫です!門開けたから通っていいよ!」
「ありがとうございます」
さすがザ・守衛の兄さん。仕事が早い。
「もう遅刻だってのにわざわざ行くとは、律儀な奴だな」
復活の呪文は唱えてないぞチンピラ守衛もどき。
「まあ一応、ここまで来ておいて引き返すのもなんですし」
「そもそもここまでくる奴のほうが少ないんだよ。ほぼ寮住まいだからな」
「そりゃそうでしょうね。坂きついですし」
「じゃあなんで寮に入らなかったんだよ」
入寮費がバカ高いからだよ。なに純粋に疑問ですみたいな顔してんだよ。
もしかしてこのチンピラ守衛もどきもボンボンか?生徒がボンボンなら守衛もボンボンなのか?
俺は何を信じればいいんだ。
「こら、人んちの事情に口出すな。あと矢ヶ崎くんは急いでるんだろ?なに引き留めてんだお前は」
俺はあなたのことを信じたらいいんですねさすが守衛の兄さん。守衛をするために生まれてきただけのことはある。そんなわけないって?ハハッ、知ってる。
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