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それはそれとしてマジで助かった。一応遅刻中の身な上に説明がめんどくさい。
お育ちの違いによる金銭感覚の違いについてお話するには、時間も場所も足りないだろう。
「じゃあ、ありがとうございました」
それだけ言ってさっさと踵を返す。正直まだぎゃいぎゃい言ってる守衛の兄さんとチンピラ守衛もどきとはこれ以上関わり合いになりたくない。面倒な予感がひしひしする。
だって守衛の兄さんがチンピラ守衛もどきにチョークスリーパー決めてるし。
マジで関わりたくない。
というか守衛の兄さんまともな人じゃなかったのかよ。どうすんのこれ。この学園真面目にまともな人いない説ある。むり。こわい。おうちかえりたい。
「あっ、矢ヶ崎くんちょっと待って!」
なんですか守衛の兄さん改めバイオレンス守衛マンさん。
「門って外の門じゃなくて内門ね。守衛室の奥だからこっちだよ」
…………。そうだよね。生徒一人のために、ましてや遅刻してきた奴のためにあの大仰な門が動くわけないもんね。察せなかった俺が悪いよね。でもね、なんだろう、めっちゃ恥ずかしい。胸を掻きむしりたい。今すぐ相棒に飛び乗って下山したい。おい笑ってんなチンピラ守衛もどき。復活の呪文は唱えてないぞ。人の些細な失敗を笑いやがって。こいつさては性格悪いな?庶民の味方あずきバーで殴るぞ。
「ああ、はいわかりました」
「こっちだよ~」
チンピラ守衛もどきと比べたら守衛の兄さんは良い人だな。あくまで比べた場合だけど。すぐに手が出る男は結婚後DVに走りやすいって我が母が言ってたし。というか母よ、誰向けの情報だよ。息子にその情報伝える意味は何だよ。母の思考が読めないよ。
とかなんとか考えてるうちに内門というかただのドアから学内に入った。
感動もクソもない入校だな。
「この道をまっすぐ行けば校舎に着くよ。俺としては遅刻したなら一度職員室に行くことをお勧めするよ」
「えっ、そんなめんどくさいことしなくちゃいけないんですか」
「矢ヶ崎くん意外とはっきり言うね?」
「行かなくても大丈夫だろ。しれっと教室入って座っとけ。どうせ気付かれねえよ」
「またお前はそういう…」
「ですよね。そうします」
「あああ…真面目な若者が誤った道に…」
「おーそうしとけそうしとけ。じゃあな坊主」
「ありがとうございました」
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