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幾度となく繰り返される
大切な人との別れは、どうしていつも切なくて悲しいのだろう。
貴方は再び、幾度目かの死に臨む。
前回がいつだったかはもう忘れた。
でも、確か、今のように雪の降る寒い晩であったのは覚えている。
あの時と同様、頭蓋骨を乾いた薄い皮で覆っただけの、哀れに痩けた頭が、私の膝に載せられ、落ち窪んだ眼はゆるりと閉ざされていた。
荒れて細くなった銀のおぐしが、蜘蛛の巣のように放射状に広がっている。
その、枯れ木のような手を握る時はいつだって、力加減を誤って、うっかり折ってしまわないかとヒヤヒヤしてしまう。
若かりし頃の貴方を思うと、死に臨む今の姿のなんと無惨なことか。
だが、愛おしさは不変だ。否、あの頃よりも愛おしい。そして、羨ましい。
貴方はいつだって、私の傍らにいる。
私の傍で誕生し、成長し、老い、そして死ぬのだ。――老いず、死ねずの私の傍で。
人に等しく与えられた老いと死を幾度となく迎える貴方を、私は羨ましく思う。
私が出来無い経験を貴方は幾度となく繰り返せるのだから。私の分まで、貴方はそれらを経験する。
貴方だけでない。
私達の子らも、やはり必ず逝ってしまうのだ。この哀れな母を置き去りにして。
そして子らは、貴方とは違い、誰も戻っては来ぬ。――なんと、親不孝な子らだろう。
「おや、珍しい。貴女が寂しがるとは」
息も絶え絶えの哀れな翁のクセに、小癪にも焚き付けてきよる。
「喧しいわ。当代でも、この化物の死に目を拝めなかった約束破りが、ようほざく」
どの代の貴方も、必ず、私の死に立ち会うと約束するのに、当代も無理だった。
「私はもう、疲れたよ。それに、この永い生に飽いた」
何人の貴方と何人の子らを看取ったと思う?
次の貴方と逢うまでの孤独を、あと何日、何回過ごすのだ?
「私は、一人で何度も老いて死ぬのに飽きましたね。【次】こそは、必ず貴女と心中しますよ」
「その言葉も、最早、聞き飽いた。これで何度目か」
そう誓うのに、結局、『愛する者を殺せない』と寸でで挫ける茶番のようなやりとりも、もう幾度も経験した。
飽きられては困りますね、と貴方は苦笑して、それから細く吐息する。
命を削って吐き出されるかのような、頼りない呼吸だった。
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