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「涼佳(さやか)おかえり。また今年も行くの?」
お母さんは不安のような呆れのようななんとも言えない感じで話しかけてきた。
「うん。」
たったそれだけ答えた。
「そう…」
会話はここで終わり。
私にはあの人のことを知る権利さえ存在しない。
でもあれからもう6年。
私は来年には社会に出る予定だ。
進学したいと思えるほど勉強が好きなわけでもない。
だから私は働く予定。
お母さんは決してあそこに行くな、とは言わない。
でもやっぱり不安は不安のようで。
私は今年はあの日のことについて全部知ろうと思って春からずっと調べ物をしていた。
知れたのは名前だけ。
羽月 誠哉(はづき ともや)
それが私を庇って亡くなった人の名前だ。
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