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彼と駆け落ちのような形になって、2週間が経とうとしていた。車の中で彼が口を開いた。
「ねぇ、話があるんだけどさ」
「何?」
「言いにくいんだけど…嘘なんだ」
「だから何が?」
「全部」
最初は意味がわからなかった。何を言っているのだろう。
「今まで百合に話してた俺の素性、全部嘘なんだ」
不思議なもので、あまり驚きを顔に出してなかった。
「ふーん」
「俺ね、こっちの町に妻がいて子供も二人いるんだ」
「ふーん」
暫くしてから、自分が泣いていることに気がついた。
「ごめん」
「何で今更言うの?言わなきゃよかったじゃん」
段々自分が壊れていくようだった。
「百合が…好きだから嘘ついておきたくなかった」
「ふーん、なら」
壊れていくよう、ではなくて完全に壊れてしまっていた。
「私の為に離婚してくれる?出来るよね?今まで騙してきたんだし」
彼は少なからず驚いていた。私は本気で彼に恋をしていた。だから、それを踏みにじられた思いと彼のために割いてきた時間を返して欲しかった。復讐だ。
「…わかった」
この時、私は初めて優越感という物を味わった。
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