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「それがおかしい。邪魔されないということはセントラルの管理が機能していないということだ」
「…どういうこと?」
「引き返したほうがいいかもしれない」
「それはできないよベルトラン。分かってるでしょ」
「ああ。ただ状況を分析した結果から導き出した答えだから、一応ルナにも伝えておこうと思ってね」
前と同じように静かにエレベーターのドアが開いた。
L2500に着いたのだ。
ただ前と違うのはドアの外が真っ暗だったということ。
「様子がおかしいよルナ。ドアから出ないほうがいい。今、周囲をスキャンしてるから待ってて」
「ベルトラン…何だか変な匂いがする」
「…この階には人はいないようだよ。急行エレベーターはホールを突っ切った反対側だから…」
ベルトランが急に黙った。何だか…ゾクゾクする。そんなはずはないんだけど…だって僕は…
「ルナ、走ろう。正面の急行エレベーターのドアまで全力で走るんだ」
「だってゲイトは?」
「機能していない。それにエレベーターのドアが開いている」
「…何か良くないことが起こってるんだね」
「うん。でも今はルナは知らないほうがいい。さあ走るんだ」
僕はベルトランの言うとおり、暗闇の中を全力で走った。
正面に急行エレベーターがあってドアが開いている。
そしてエレベーターの中に走り込んだけどドアは閉まらない。エレベーター自体機能していないようだ。
「ベルトラン…」
「あと少し…今コネクトしてるから」
「ベルトラン…何か近づいてくるよ」
「分かってる。黙って静かにして。動いちゃダメだよ」
暗闇の中を何か大きなものがやってくる音が聞こえる。
ローパーではない。
ローパーのボディはあんな湿った音はしない。
べちょ、ぐちゃっ、という有機物が潰れるような音がする。
そして何かがエレベーターのドアから中を覗いた。
「 ! 」
…いろいろなものが混じりあった形がよく分からない大きなもの…
動きながら崩れていて、落ちた塊がぐちゃっと湿った音を立てる。
そして腕のようなものを伸ばしてこちらにそれがやってきたとき、唐突にドアが閉じてエレベーターが上昇し始めた。腕のようなものは閉まったドアに切断されてる床に転がっている。
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