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燃えさかる火の中でやがて灰燼になる私は以下のような思いを巡らした。
長い歴史の中で人類は殺し合いを続けてきた。殺し合いの道具をつくるためにコンピュータが開発されて、それは負だけでなく人類の文明の進化に大きく貢献してきたことは認められる。
しかるに、各国の政府は常に仮想の敵を想定し国民を煽り、他国を憎み殺し合いを扇動してきた。
侵略、テロ、紛争、戦争……、人類は互いを信じ合うことができずもがき苦しんできたのである。
もし、殺し合いのための兵器をつくる莫大な費用を純粋な科学技術の進歩に注ぎ込み、あの宇宙からの電波・メッセージを読み解くことができれば、人類の運命も大きく変わっていたのかもしれない。あの未確認飛行物体も味方として迎え入れることができたのではないか、そんなふうに考えることは浅薄であろうか?
あのメッセージは、宇宙の中で他の星を侵略することを禁じたものであったとしたら……。
地球人が未確認飛行物体に乗り込んだとき、宇宙人は侵略として自衛権を発動したのだとしたら……。
これから死んでいく私には、その真実を知る術はないのである。
(了)
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