その言葉を聞きたくて

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「また君か・・・僕は忙しいんだよ?わかってる?」  私が秘かに思いを寄せている、幸郷琉夏(ゆきさとるか)さんは、探偵だ。事件がある度にお世話になっている。 「そんなこと言わないで、助けてくださいよ」 「あのねえ、夕原(ゆうはら)君。僕は君に常々言っているはずだよ?どうしてもわからない謎がない限り呼び出さないでくれって。ちゃんと自分で考えないと、脳が老けるよ?」 「わからないから呼んだんです」 「本当に~?じゃあ、君が考えたこの事件の真相は?言えるでしょ?考えたんだから」 「う・・・それは・・・その・・・」 「ほーら、やっぱり考えてないじゃない」 「すみません・・・」  何でもお見通しなんだ・・・ろうけど。 (私の気持ちは、気づいてないよね・・・)  そこを見透かされても困るのだけど。 「ま、それは今に始まったことじゃないか」 「うっ・・・」 「どれ、仕事しますかね~。被害者は?」 「あ、はい!被害者は」 「58歳男性、独身。趣味のランニング中に何者かに襲われ重傷。今は病院で治療中・・・」 「そ、その通りです・・・。なぜわかったんです?」 「君の手帳の内容が見えたから。こういうところ、抜けてるよねー」 「・・・すみません」 「謝るくらいなら犯人捜そうか」  そう言って、くるりと背を向けて歩いていってしまった。その後を慌てて追いかける。 「どうしてランニング中に襲われたんだろうねー?」 「え?」 「だって、ランニング中に襲うってことは、そのタイミングしかなかったってことでしょ?この辺はベンチだってあるし、座って休んでるところをガーン!でもよくない?」 「あ・・・」  確かにその通りかもしれない。走ってるところを襲うなんて、けっこう手間じゃないだろうか。だって、相手は動いているわけだし、狙いづらいはずなのに。 「立ち止まったところを襲ったとか・・・?」 「だとしたら、庇うよね?頭」 「え?」 「君の手帳によると完全に油断してるところを襲われてる。頭を庇った痕跡はなし。立ち止まったところをガーン!ってやられるんだとしたら、よっぽど気配に鈍感じゃない限りは普通庇うと思うんだけど」 「あ・・・」 「一番わからないのは正面に怪我をしているってこと。正面から襲われたんなら、なおさら腕で庇うなり逃げるなりしそうなもんだけどねー?なんでだろうねー?不思議だねー?どうしてだろうねー?」 「確かに、そうですね・・・」
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