開かずの踏み切り

　私には二人の息子がいる。
　長男は大学二年生で東京に下宿、次男は高校一年生で石川県の高校で寮生活を送っている。
　今年、結婚二十周年を迎えるが、結婚してすぐに妻が妊娠し、夫婦だけの生活は一年にも満たなかった。いつも子どものいる風景が当たり前であったのに、四月からは二人だけの生活に久しぶりに戻ったのである。
　一階の居間で二人が口数少なく食事しているとき、天井がミシリと音を立てると、息子たちがひそかに帰ってきて、二階にいるのではないかと思うことがある。夫婦二人の会話は息子二人に関する話題ばかりで、お互いに関することは本当に少ない。これでは、四十代後半なのにまるで老夫婦のようだ。
　私は中学校の社会科の教職員であるが、今年の四月に転勤になった。前任校では後半は学年主任をしていたのだが、今回、久しぶりに学級担任をすることになった。中学二年生の担任である。
　四月八日に始業式・入学式が終了し、翌日、学級開きをすることになった。