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約束の時間より2時間近くも遅刻をし、ようやく俺は面接会場のあるホテルにたどり着いた。
会場は22階。最上階にある。
指名手配犯のように人目を気にし、ホテルに入る。そしてエレベーターに乗り、最上階まで上がった。
だって、ここに来る途中に気づいたのだが、会場として使われるホテルは都内指折りの高級ホテルだった。それも、これまたボタンを押した時に気づいたのだが、指定された部屋はいわゆるスイートルーム。リクルートスーツの若造が胸はって歩ける場所じゃない。
「かなり場違いだよな……」
いつつまみ出されてもおかしくない。
おっかなびっくりでエレベーターを攻略し、面接官の待つ部屋を目指す。
ついに、来てしまった……。
ふとドッキリじゃないかなあなんて思いながら、インターホンを押す。しばらくして、重厚な扉が開かれた。
「ああ。鈴木環様ですね」
「……は、はい!」
俺は一瞬目の前の男に見惚れた。
状況を思いだし、直立不動で返事をした。
目の前の男は、声からして電話の吉原だと推察できた。だが俺を最も驚かせたのは、彼が想像を絶するほどの美形だったことだ。
吉原という名前に反して、男は外国人だった。髪は柔らかそうな、雨細工みたいな金髪で、目はメロンソーダの色。でも肌の色は褐色だ。顔立ちは優しげで、中性的な美しさだ。年齢は若く見えた。三十代か、多くとも四十にはいっていないだろう。
彼はアイボリーのスーツに紺のネクタイを締めていて、それが嫌みなくらい似合っていた。
不躾な視線に慣れているのか、吉原さんはくすりと笑い、流暢に言った。
「お待ちしておりました。立ち話もなんですから、どうぞお入りください」
「はい……」
閉まる扉に体を挟み、吉原さんは中に招き入れてくれる。
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