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東と別れ、コンビニで夕飯と晩酌用にビールを買い込んでから帰宅した。
普段は酒なんてあまり飲まないんだけど、今夜はやけくそな気分だった。
「だれも俺の価値なんて分かってくれないんだ!」
飲み干した缶ビールを思いっきり机に叩きつける。今夜はこれで二缶めだ。俺にしてはペースの早いほうだ。しゃっくりをし、瞼の下がった目を擦る。なんだかさっきからピントが合わないのは、コンタクトを外したからってだけじゃないだろう。
「部屋んなかがぐらぐらしてる~」
急ピッチで飲んだのもあって、早くも酩酊状態になってきたようだ。まあ酒と相性の悪い体なんだろうな。だから飲み会でも最初の一杯でギブアップしてたんだけど。
よくお酒でストレス発散とか聞くけれど、俺の場合は逆みたいだ。
気持ちよくなるどころか、悲観的な考えがぐるぐる脳内を循環し、目頭が熱くなってくる。
あんたは気が強いわりに昔から泣き虫ね。
小学生のころ。やはりクラスで一番チビで、そのくせ気ばかりが強くて、ガキ大将に喧嘩を挑んでは返り討ちにされていた。
泣きながら帰ると、いつも母さんはそう言いながら消毒液を塗ってくれた。おおらかで、優しい人だった。二年前に亡くなって、もういないけど。
俺はいわゆるシングルマザーの環境で育った。
決して余裕のある暮らしじゃなかったのに、母さんは無理して俺を大学なは入れてくれた。だからちゃんと大学を出て、就職して。安心させなくちゃなって思うのに……。
「なにをやってもだめだな……」
強い自己嫌悪に駆られているうちに睡魔がやってきたのか。いつの間にか眠ってしまっていた。
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