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「……あさ?」
部屋の中はもう明るくなっていた。
机の端に置きっぱなしの眼鏡を手繰り寄せる。外ではコンタクトだが、実はかなりの遠視だった。ピントを合わせ時計を見ると、11:30を指している。朝どころか昼だ。
眠い目を擦り、煩く鳴るスマホに手を伸ばす。着信が入っている。それも見覚えのない番号だ。
眠りを妨げられ、俺はイライラと液晶画面の数字を一瞥した。無視してしまおうかとも思ったが、一向に鳴り止む気配のない。
仕方なく、電話に出た。
「……はい」
「PMS社の吉原と申します。こちらは鈴木環さんの携帯で間違いないでしょうか」
男の声だった。高くも低くもない声が耳に心地よく聞こえた。
だけど"PMS"なんて会社名に覚えがなかった。
首を傾げながら、ええまあと頷く。
電話口の男ーー吉原は安堵したように続けた。
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