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荷物を机の上に置いて、再び靴を履いて階段を下りる。叔父はそれを見越したようにまた笑顔を向ける。
カウンター席の上に、湯気を立てるカレーライスが乗っていた。
「夕飯にどうだい?」
「あ、はい、……いただきます」
高めのスツールに腰掛ける。小さく手を合わせてからスプーンに手をつける。
「あの」食べる合間に叔父に伝えておく。「……私、ここで『仕事』することになると思うんです」
「まあ、そうだろうね」叔父は小さく肩をすくめた。
「巻き込んでしまって、すみません」
「いや。そんな風に思ったことはないよ。……巡り合わせなんだろう」
穏やかに。
凛々子にとってはその微笑だけが、今は唯一の理解者。
壁にかかるカレンダーに目を向ける。明日は荷物の整理、そして次の日から学校。
FMラジオだろうか、邪魔にならない音楽。叔父は片付けを終えるとカウンターの中で同じスツールに少しだけ腰を預ける。
静謐な時間。
「あの、叔父さん」
「うん?」
「……経営、大丈夫なんでしょうか」
あはは、と豪快に笑って。
「まあ、それも巡り合わせだろうね」
「……ああ」
そっちも期待されてるのか。凛々子は釣られて少しだけ口の端で笑いを零した。
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