prologue

4/4
前へ
/384ページ
次へ
 荷物を机の上に置いて、再び靴を履いて階段を下りる。叔父はそれを見越したようにまた笑顔を向ける。  カウンター席の上に、湯気を立てるカレーライスが乗っていた。 「夕飯にどうだい?」 「あ、はい、……いただきます」  高めのスツールに腰掛ける。小さく手を合わせてからスプーンに手をつける。 「あの」食べる合間に叔父に伝えておく。「……私、ここで『仕事』することになると思うんです」 「まあ、そうだろうね」叔父は小さく肩をすくめた。 「巻き込んでしまって、すみません」 「いや。そんな風に思ったことはないよ。……巡り合わせなんだろう」  穏やかに。  凛々子にとってはその微笑だけが、今は唯一の理解者。  壁にかかるカレンダーに目を向ける。明日は荷物の整理、そして次の日から学校。  FMラジオだろうか、邪魔にならない音楽。叔父は片付けを終えるとカウンターの中で同じスツールに少しだけ腰を預ける。  静謐な時間。 「あの、叔父さん」 「うん?」 「……経営、大丈夫なんでしょうか」  あはは、と豪快に笑って。 「まあ、それも巡り合わせだろうね」 「……ああ」  そっちも期待されてるのか。凛々子は釣られて少しだけ口の端で笑いを零した。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加