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※
その後。
依頼人に、放課後、部活前に時間を作って貰って、1通目を返すのと引き換えに報酬を受け取って、「結果」を説明する。2通目が机の中から出て来た時点で彼はまた少しばかり恐怖を上塗りしていたけれど、それが誰の手によるものだったのかを、名指しする。
「山沢あ?」
案の定、胡散臭そうな目で睨まれる。……凛々子にとっては想定内だけれど。
「いや、本当だって。と言うか、お前がそういう反応になるんだろうなって安斉さん予測してたよ」
「どういう意味?」
「俺も一緒に調査してくれって頼まれて、ここしばらく一緒に色々見て回ってたんだ。…で、山沢がその手紙をお前に届けた現場、『俺も』見てた」
強調してくれる。途端に豊の方の顔が拍子抜けしたように見えた。
悔しいけれど効果抜群だ。彼の「霊感のなさ」はそれなりに有名だったんだろう。
「……本当に山沢なのか」
「だからそう言ってる。『俺が』」
「本当に?」凛々子に目を向けて来る。
「ええ。……実は、そちらの1通目をお預かりして、色々な角度から調べはしたのですが、私の管轄ではないということは早々に判断がついていたんです。でも……」少しだけ息をついて。「島崎さんは相当に怖がっておられました。女性からと思われる手紙を受け取ったら、普通、生きている人間が差出人であることを最初に疑うものだと思います。でもそうではなかった。妹さんと、決めつけておられた」
隣で、したり顔で芳明が頷いているのがちょっと面白い。まるで自分の手柄みたいに。まあ、今回の件は、半分はその通りだから仕方ない。
「ですから、差出人にちゃんと目星をつけてから報告しないと、島崎さんは納得されないだろう、と考えたのです」
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