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紙パックの甘ったるいコーヒーで少しばかり落ち着いて。
「お前はこれ知ってる?」
スマホの画面を出して来る。出ている画面には見覚えがある。
「ああ、LBMね」
ローカル・ボード・メッセンジャー、という名前のSNSアプリだ。学校が連絡手段として推奨しており、入学手続きの際にインストールを促された。学校からの連絡は、紙でプリントを配る代わりにLBMのグループチャットで飛んで来ることになっている。アプリを利用出来ない人は旧来のメールで、それも使えない人だけ紙のプリントを配ることになっている。
このアプリの特徴は、メッセージのやり取りにBluetoothを利用するという所だ。パケット代がかからないし、何より物理的に近くにいる人でなければそもそもメッセージをやり取り出来ない。言わば、学内の壁に掲示板を用意して貼り紙で周知する(学校の外の人は見られない)のと近いことがアプリで出来るというものなのだ。
学年ごと、クラスごと、学校全体のグループチャットは最初から強制加入。生徒同士でグループを作ることも認められているが、メッセージの内容は全て先生によってチェックされている。学校の外のSNSなど、見えない場所でいじめなどの問題が起きるよりはいい、と、全国的に学校や塾ではこのアプリが重宝されている。
「……あ、いや、LBMじゃなくて、この中身」
「ん? ……読んでいいの?」
クラスの(生徒同士の)グループチャットに見えた。
「いいよ、その画面に出てる範囲のことなら」
覗き込んで目で追う。動物の可愛らしいアイコンは女子生徒だろうか、名前は知らない相手だ。
──『なんであの喫茶店で占い?』
──『わかんないけど…占いって言いつつお祓いとか引き受けてるってウワサも聞いたよ』
──『え、なに、オカルト系? ウソっぽーい』
──『まーそういう相談したい人もいるんじゃないの? 幽霊に取りつかれてますみたいな』
芳明が画面から目を離したのを見計らって、豊は端末を手元に引き戻す。そして。
「あの喫茶店で、お前のクラスの安斉凛々子が占い屋をやってるって話がこの後に続くんだ」
「……へ、へえ」
至って真顔のサッカー部員。微妙に嫌な予感がしつつも表に出ないように相槌を返す。
「で、……その、もしかして安斉って霊感強かったりするのかなって」
「いや、まあ、……そうなんじゃない? そういう商売しているとしたら」
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