けやきは知っている

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そして父は目をつぶり、うつむいた。 それを聞き終えた私は、ショック過ぎて、ただ呆然と立ちすくすだけであった。 そして自分自身を怒り、戒め、罵倒した。 私が悪い。 父に母を殺させたのは私のせいである。 もし早い段階で田舎に帰って両親と暮らしていたら、仮に母が認知症になっていても、こういった悲劇にはならなかった。 父が母を殺すことはなく、私と父二人で母の介護が出来たのだ。 本当に申し訳なかった。 口には出さなかったが、下を向き、自分を責めるだけ責めた私にたいし、父はなんとなくそれを察したのか 「ケーサツに駆け込むんやったら、それでもエエし。 殺人事件なんやからな。 オレは逃げも隠れもせん。 それと、育男は全然悪くないんやから、あまり悩むな。 悩んで生きて行ってもしゃーないやんか。 これからを大事に強く生きていけ。 ただ……たまにでエエから、かあさんに会いに来てくれ、な」 と、ほのかに穏やかな笑顔をこちらに向けた。 目頭が熱くなっていた私は、もう口を開くことなく無言で深く頷いた。
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