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‐3‐
その週の金曜日。
午後6時で会社を上がり、6時半、自宅に着いた。
玄関で靴を脱いでいると妻が出て来て
「アナタ、お客さん来てるわよ」
と、言った。
(え!客?)
オレ目当てに訪ねて来る客など、もう何年もいない。
誰なのか見当がつかない。
少し不安になり、リビングに入った。
中央の椅子に腰掛けている男。
ソイツを見た時、オレは瞳孔が思いっきり開き、体じゅうに悪寒が走った。
そこにいた中年男、それはアノ窃盗犯であった。
(な、な、何故コイツはオ、オ、オレの家に……)
男は隣に座っている小4の娘と、親しげに会話していたようだが、オレに気付くと
「お~、ヤスフミ~。久しぶりだなぁ。
突然押し掛けて来てスマン。
いやぁ、オマエがこの団地に住んでいるってのは、昔のツレから聞いて知ってたんだけどサ。
近くまで来る用があったんで寄らせて貰ったんだわ。
元気そうじゃないかー」
と、この間とは違う平穏な笑顔で言った。
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