本当のワル

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オレは、ここにどういう人間が住んでいるのかは知らないが、コヤツは空き巣、ドロボウである。 オレを住人と勘違いし、自分で暴露しているのだ。 (さて、どうしたものか) オレが黙っていると、男はそ~っと顔を上げた。 そして、腰に手を当てているオレを見ると、怪訝な表情になった。 「え?あんた誰なの?」 七、三わけで、額の広い40代後半、オレと同い年くらいだろうか。 その上がった額の右隅に、小さいキズのある、人相はそう良くないその男は、オレを見てそう言った。 「オレは下の階の住人だ。間違ってこのドアを開けたら、お前がいた訳だ」 オレがそう言うとヤツは 「なるほど、そう言うことか。ここは女性の1人住まい。確か今は彼氏も居ないと思っていたから、ビビッてしまったよ。驚かせるなよ」 と、立ち上がった。 そうか、女性の1人住まいなので侵入したって訳か。 コイツは、そこまでリサーチしていた。 計画的犯行である。 「お前はドロボウだな。ふてーヤローだ」 オレがソイツを捕まえようとした時 「あ、やべ!帰ってくる。おい!アンタ、外へ出ろ」 肩を押され、二人して通路に出た。
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