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「もうすぐ女は帰ってくるんだ」
そのまま行こうとするソイツの腕をオレは掴んだ。
(逃がすものか)
「おいおい、いてーよ」
男は捕まれた腕を振りほどこうとしていたが
(逃げられたら困る)
と、オレはその手を緩めなかった。
二人して縦に並び、通路を階段に向かって歩いていると、その階段から1人の女性が上がって来た。
30半ばで、薄く髪を染めており、ちょいぽちゃ。
ミルキーピンクジャージ姿のその女性は、たまーに見る顔なので、団地の住人だと言うのは判っていたが、もちろん名前も知らないし喋ったこともない。
すれ違いざま、彼女とオレは同じタイミングで軽く会釈した。
そしてオレらが階段を降りようとした時、女は505に入って行った。
なるほど、あの女性があそこに住んでいたのか。
オレらは無言で下まで降り、団地の外へ出た。
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